痔ろう(穴痔)とは
痔ろう(あな痔)とは、直腸からばい菌が入って肛門のまわりに炎症を起こし、膿を出すできものができて、それが最終的に直腸と皮膚がつながるトンネルを作ってしまう痔です。 年齢層では40代以上に多く、性別では男性に多くなっています。初期症状に、肛門周辺の痛みや発熱があります。
トンネルから膿が出てくる症状の他に、痛みや発熱を伴います。長期間放置した場合にはトンネルが枝分かれして複雑な通路をつくってしまい、まれにがん化するケースもあります。そこまで進行してしまうと、手術により肛門をとらなければならなくなってしまいます。
痔ろうの原因
痔ろうになる主な原因は、下痢などによって歯状線(しじょうせん)にある肛門陰窩(こうもんいんか)というくぼみに便が入り、細菌に感染することです。感染すると肛門周囲膿瘍という膿の袋ができ、袋が外向きに破れて膿が出ます。肛門陰窩は小さなくぼみですから、通常はここに便が入り込むことはありません。ただし、下痢をしていると便が入りやすくなります。
また、体調が悪い時や体力が弱っている時などは感染しやすい時期ですので、便の大腸菌に感染し、化膿(かのう)しやすいと言えます。また、近年になって、温水便座を使用する方の痔ろうが増加傾向にあります。洗浄の際に肛門の中まで水が入り、下痢便と同じ状態になってしまうことが原因です。
肛門周囲膿瘍とは
肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)とは、肛門のまわりに膿(うみ)がたまる状態で、感染によって起こります。飲酒、温水便座の使用、下痢や軟便、抵抗力が弱っている状態などが、この病気にかかりやすいと言えます。痛みは膿瘍のできる部分によって変わり、浅いところにできると激しい痛みが、深いところにできると腰に鈍い痛みが起こります。治療は、切開して膿を出すのが一番適しています。
痔ろうの症状
痔ろうは、膿のトンネルがどのような位置を通っているかによって以下のような4つの型に分けられます。数字が大きくなるほど深く筋肉を巻き込む形になり、それぞれに手術の方式も異なります。
Ⅰ型痔ろう
膿のトンネルが浅い皮下にあり、肛門括約筋にまでは影響がおよんでいない単純なタイプの痔ろうで、「皮下痔ろう」「粘膜下痔ろう」とも呼ばれます。このタイプのほとんどは肛門陰窩からではなく、裂肛によってできた肛門付近の傷から細菌が感染して起こりますが、発生頻度はあまり高くありません。
Ⅱ型痔ろう
膿のトンネルが内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を通っている痔ろうで、トンネルが下方向(肛門側)に伸びている「低位筋間痔ろう」と上方向(直腸側)に伸びている「高位筋間痔ろう」に分類されます。このうち、低位筋間痔ろうは全体の約70%を占める最も一般的なタイプの痔ろうです。さらに、Ⅱ型痔ろうはトンネルの本数が1本の場合を「単純型」、2本以上の場合を「複雑型」として細分化されています。
Ⅲ型痔ろう
膿のトンネルが外肛門括約筋の奥に位置する肛門挙筋(こうもんきょきん)の下を通っている痔ろうで、「坐骨直腸窩痔ろう(ざこつちょくちょうかじろう)」とも呼ばれます。そのほとんどは男性に発症します。背中側の肛門陰窩から細菌が感染することで、トンネルが直腸の後方奥深くに位置する広いスペースまで伸び、そこにためこまれた膿がやがて内外の肛門括約筋を貫いて出口へと向かいます。
この時、トンネルが複数に枝分かれすることが多く、その数だけ出口も増えて複雑化していきます。また、トンネルは肛門の左右両側に貫通する場合と片側だけに貫通する場合があります。
Ⅳ型痔ろう
膿のトンネルが肛門挙筋を貫いて腹膜の下にまで伸びていく痔ろうで、「骨盤直腸窩痔ろう」とも呼ばれます。まれにしか発症しないといわれる最も複雑なタイプの痔ろうです。
痔ろうの治療
痔ろうは、手術でしか治せない病気です。他の痔と違って、生活習慣の見直しや食生活の改善、治療薬を使っての治療法はほとんど効果がありません。
手術には2種類あり、一気に切り開いて管を取り除く方法と、切り開かずにゆっくりと管を取り除く方法があります。切り開く場合は、入院が必要とですが3週間程度と早く治ります。ただ、傷が治っても肛門が変形し、傷口からおならや下痢便が漏れる可能性があります。そして、この肛門の変形を治療することは困難ですので、当院ではリスクの低い、ごく浅い単純痔ろうにしか行っておりません。